判例解説が後先になったが、平成17年12月15日、最高裁はサラ金・クレジット等のキャッシング(現金借り入れ)の返済方式について、業者側に厳しい条件を課す判断を示した。
お金の貸し借りについては、例えば12万円を借りて毎月1万円の元金に契約利息を乗せて1年間で返す等の約束をするのが典型例だが、今回の最高裁判例で問題になったのは、いわゆるリボルビング払いと通称される返済方式である。例えば、サラ金・クレジット会社との基本契約で、30万円の枠を設定され、その後は枠内の金額までであれば何回でも借りることができ、返済も最低1万円を例えば15日までに行えば良い、もちろん余裕があれば2万円返しても良いという方式である。だから、30万円の枠の中で枠5万円を残して25万円借りて、翌月15日に1万円返し(これは利息込みなので厳密には残元金が1万円減るわけではない)、それを何ヶ月か繰り返して枠の残り5万円が広がって8万円になれば、また6万円借りる、という様な利用の仕方が可能な訳である。
ところで、以前の判例解説で、利息制限法の制限利率、出資法の刑事罰利率、その中間の貸金業規正法のグレーゾーン利息のみなし弁済を説明した(2005年7月20日「消費者金融業者に取引履歴開示義務」)。
利息制限法の利息を超えた利息の返済が無効にならないのは、貸金業法43条1項で「みなし弁済」として有効とされるからであるが、この43条の適用があるのは、貸金業法17条で要求されている内容が記載されている書面を、業者が借り主に交付した場合とされている。そして、17条で記載が要求されている内容として、貸付ごとに「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」を明らかにする内容になっていなければならない。冒頭挙げた例で行けば、典型例の場合12万円を契約利息を乗せて1年で返すのであれば、その旨を17条書面に記載することは可能だし義務とされている。ところが、リボルビング払い方式だと、最低返済額さえクリアすれば枠内の金額である限り何度でも借り入れを繰り返すことが出来るし返済額も最低額が決まっているだけだから、貸付ごとに「返済期間及び返済回数」や各回の「返済金額」を明らかにすることは不可能である、だから、そのことを記載していなくても17条書面で他に要求されている事項を記載していれば17条をクリアしたことになり、43条1項が適用され、利息制限法を越える利息を取っても有効なのだと、業者側が主張した。
しかし、最高裁は、業者のこの主張を認めなかった。以下、最高裁の判決文を若干の言い換えを含めながら引用する。
「それぞれの貸付けについて,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,業者は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではない。それぞれの貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,業者は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に『準ずるもの』として(『』は引用者),17条書面として交付する書面に記載すべき義務がある。そして,17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載があれば,借主は,それぞれの借入れの度に,今後,追加借入れをしないで,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるものと解され,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準じた効果があるということができる。」
以前債務整理の仕事を引き受けたときにやった試算では、リボルビング払いで年率29.2%もの利息を取られると、毎月例えば1万円づつ返してもいつまで経っても元金が殆ど減らない。逆に言うと、業者側はいつまででも利息を取り続けることが出来る訳である。借り主側にはいかにも便利な仕組みのように見えて、実は業者が利益を上げ続ける仕組みなのである。
今回の最高裁判決に従うなら、業者は貸付・返済のコンピュータ・プログラムを組み直して且つそれを書面に記載するようなシステムとATMの機械にしなければならないのだから、そう簡単ではない筈である。