既に本欄でも最高裁が貸金業者に厳しい判断を示した判例を幾つか紹介して来たが、平成18年1月13日、最高裁は、貸金業者の高金利による営業を事実上シャットアウトするに等しい極め付けの判断を示した。
貸金業者が利息制限法を超える利率で貸し付けることを容認する仕組みは、本欄2005年7月20日の取引履歴開示義務の判例で解説したが、ここで若干のおさらいをしておく。
利息制限法では貸付元本の金額ごとに制限利率を定め、それを超える利率は無効としている。すなわち貸付金額が10万円未満のときは年20%、10万円以上100万円未満のときは年18%、100万円以上のときは15%、の利率を超えるときはその超えた部分は無効と規定されている(利息制限法1条)。他方、出資法では年29.2%を超える利息を取る営業をすると刑事罰が科されることになっている。そして、この無効だが刑事罰の対象までにはならない年29.2%以下で且つ利息制限法を越える利率の部分がグレーゾーンと呼ばれる。このグレーゾーンについては貸金業規正法で一定の条件を守っておれば有効、すなわち利息を取って良いことになっており、サラ金・クレジット業者はこの条件を守っていると称して年29.2%の高金利を取っていた。そして周知の通り空前の売上を上げて来ていたのである。
その一定の条件とは、貸金業法が要求する書面を借主に交付すること、借り主が任意に(つまり自由意思で)高金利を支払ったこと、である。そして、最高裁はこの交付要求書面についてはその記載内容に極めて厳しい条件を課すことで、貸金業者の高金利を容易に認めない行き方をこれまで取っていたのであるが、今回は、それに加えて借り主が「任意に支払ったこと」という条件について、決定的とも言える厳しい判断を示したのである。
すなわち、契約通りの分割払いを怠ると分割払いが認められず残金を一括で支払わなければならないし且つ年29.2%の遅延損害金も支払わなければならない、という契約だと(それが普通だが)、借り主は契約通りの利率で支払うことを事実上強制され、その結果、利息制限法違反の利息の支払いを強制されることとなって、これでは「任意に支払った」ということにはならない、というのである。
この様な見方を採るならば、「任意に」高金利を支払う借り主は殆ど存在する余地はないであろう。つまり、この判断によって最高裁はグレーゾーンで儲けていたクレジット・サラ金の貸金業者の息の根を止めたに等しい。今後は、貸金業者は利息制限法の利息でしか事実上営業を行えないことになる。
自己破産の件数が一時に比べると減少傾向にあると言われているが、破産に至る原因となっていたサラ金クレジット業者の高金利が、この最高裁判断で抑制されることになれば、益々破産件数は減って行くことになるのではないだろうか。