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2011.05.21(土)

若者を見殺しにする国

赤木智弘

「『丸山眞男』をひっぱたきたい−31歳、フリーター。希望は戦争」という論考を2007年に「論座」という雑誌に載せて注目を浴びた著者の評論である。

「希望は戦争」という刺戟的なフレーズで様々な批判を浴び、本書はそれらの批判に逐一丁寧に反論している。

著者の主張の骨子は、高度経済成長で恩恵を受け且つバブル崩壊後も恩恵を受け続けている「安定労働層」と、ポストバブル期に就職氷河期を迎え且つその後遺症で社会の最底辺層に生きざるを得ない「若者労働者層」を対立的に捉え(「正社員」と「派遣社員」の対立という側面もある)、後者の不幸を救済するには社会の究極の流動化としての戦争しかないというものである。

著者の文章は説得力がある。だからといって諸手を挙げて「希望は戦争」と言ってしまっていいかというと、流石にそうは行かない。「安定労働層」と「若年労働層」の超え難い対立をどう解消するかが問題なのであるが、著者は、「ワークシェアリング」等の唱えられる方策を一つ一つ潰して行き、結局、戦争しか残っていないのではないかという物騒な議論に辿りつく。著者は自らを扇動家と規定し、この問題の本来の解決は学者が考えるべきだとする。私は学者ではないので、この若年労働者層の貧困化に対する的確な処方箋は思いつかない。地道に「反貧困」を唱え、出来るところから進めていくしかないのではないか位のことしか言えない。特に、今回の東日本大震災の破滅的状況が、従来の格差社会に重なると、暗澹たる気分になる。やはり「がんばろう日本」で行くしかないのではないか。


朝日文庫
720円+税