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メディア評インデックス

2011.05.28(土)

野球にときめいて 王貞治、半生を語る

王貞治

著者は誰もが知るプロ野球界の第1人者である。その経歴は、ホームラン世界記録に代表される華麗な記録に彩られている。

双子の一人として仮死状態で生まれた頃から、V9当時の巨人現役選手や巨人監督・ダイエー(後のソフトバンク)監督を経て、現在71歳になるまでの心境を語る。

著者は、野球の神様が様々な幸運を自分に与えてくれてここまで来れたかのように回想されるが、もちろん運だけでこれだけの業績を上げられた訳ではないので、著者自身の超人的な努力があったことも、この語りの中でわかる。確かに人間関係に恵まれ運にも恵まれている方だろうが、運も実力のうちと言われるように、著者の誠実な人格がこれだけの実績を呼び込んだのだろう。その誠実な人柄の故か、多分あったに違いないドロドロした人間関係の軋轢などは殆ど語られない。その意味では三面記事的暴露を期待して読むと宛は外れる。永遠のライバルと思われる長嶋茂雄氏に対しても、彼は「別格」扱いで、激しい闘争心を燃やした等という話は書かれないし、日本シリーズでホークス・巨人のON対決もサラリとしたものである。その意味で、淡々とした語りであり、勝負師としてのギラギラした闘争心はあったのだろうが、余り表に出てこない。これを王さんの人柄とみるか王さんの現在の年齢のしからしむるところとみるか。

私はアンチ巨人だが、ホークスファンなので(その意味では王さんのファンでもあるので)、これはこれで良いのだと思えてしまう。王さんの良い面を知りたいという読者にはお薦めだろう。


中央公論社
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