甲能法律事務所甲能法律事務所
検索
福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス福岡地裁、教諭の体罰・いじめに賠償命令

判例解説インデックス

2006.07.31(月)

福岡地裁、教諭の体罰・いじめに賠償命令

市に責任

福岡市の市立小学校教諭から体罰や差別的発言を繰り返された結果、重い心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、当時小学生だった男児と両親が、教諭と市を訴えた事件で、福岡地裁は、教諭の暴力を認定し市に金220万円の支払いを命じた。教諭個人には責任は認めなかった(朝日新聞28日付夕刊)。市の責任は、公務員の不法行為による損害賠償責任を国・地方公共団体に負わせる国家賠償法という法律に基づくが、この場合、公務員個人の責任は、この法律の解釈で原則として問わないことになっている。

継続的な「いじめ」「体罰」が認定できれば、これは教育とは無関係であるから、不法行為となるのは論を俟たない。ただ、判決は原告の訴えであるPTSDを認めなかった。

PTSDはウィキペディアの解説によれば、以下の通りである。

「心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、PTSD; Post-traumatic stress disorder):心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後に様々なストレス障害を引き起こす疾患のこと。心の傷は、心的外傷(トラウマ)と呼ばれる。トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷がある。洪水、火事のような自然災害、または戦争、監禁、虐待、強姦といった人災によって生じる。

以下の3つの症状が、PTSDと診断する為の基本的症状である。

(1)事故・事件・犯罪の目撃体験等の一部や全体に関わる追体験(フラッシュバック)。

(2)トラウマの原因になった障害、関連する事物に対しての回避傾向。

(3)精神的不安定による不安、不眠などの過覚醒症状。

患者が強い衝撃を受けると、精神機能はショック状態に陥り、パニックを起こす場合がある。その為、その機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようとする。その為、事件前後の記憶の想記の回避・忘却する傾向、幸福感の喪失、感情の麻痺、物事に対する興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失などが見られる。特に被虐待児には感情の麻痺などの症状が多く見られる。

精神の一部が麻痺したままでいると、精神統合性の問題から身体的、心理的に異常信号が発せられる。その為、不安や頭痛・不眠・悪夢などの症状を引き起こす場合がある。特に子供の場合客観的な知識がないため、映像や感覚が取り込まれ、はっきり原因の分からない腹痛、頭痛、吐き気、悪夢が繰り返される。

この様に明確な診断が出れば、これは明らかに病気なのであるから、精神的な損害というより、例えば交通事故で失明した等の肉体的損害と同等の評価をして、賠償責任を認めるべきことになる。」

この点を福岡地裁は何故、否定したのであろうか。続報によれば(朝日新聞29日朝刊)、原告は、この認定を不服として控訴するそうである。