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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス最高裁、証拠に「前科」を厳しく制限

判例解説インデックス

2012.09.09(日)

最高裁、証拠に「前科」を厳しく制限

東京高裁判決を破棄

最高裁、証拠に「前科」を厳しく制限

有罪か無罪かを判断するため、被告の前科を証拠として使ってもよいのか。この点が争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁は7日、「著しい特徴があり、起訴内容と相当似ているため、前科自体で同じ犯人と合理的に推認できる場合に限る」との初判断を示した。判決は「根拠の乏しい人格評価につながりやすく、事実認定を誤らせるおそれがある」と述べ、前科を証拠として使う危険性に言及。裁判員制度で市民も審理に参加するようになっていることから、予断や偏見を与えかねない前科での立証を厳しく制限した形だ(朝日8日朝刊)。

前科が証拠として安易に使われるなら「前も同じことをやっているのだから、今度もやったのだろう」との予断・偏見のもとに審理が行われかねず、合理的な立証が不十分なまま有罪が認定され冤罪を生みかねない。そこを注意する厳しい姿勢を打ち出したということだろう。

注意すべきは、証拠として厳格に見るべきだとされたのは犯罪事実に有無すなわち有罪か無罪かの次元での問題で、一旦犯罪事実ありと合理的に立証された後の量刑事情としては同種前科が不利に作用することがあるということだ。量刑の場面では「前も同じ犯罪をやっているのに懲りずにまた同じ犯罪をやっている」となれば、量刑は重くならざるを得ない。この次元の違いを厳しく区別する必要があるということだ。