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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス11月25日、昨年の衆院選、議員定数不均衡の最高裁判決

判例解説インデックス

2015.12.06(日)

11月25日、昨年の衆院選、議員定数不均衡の最高裁判決

繰り返される「違憲状態」判決

先月25日、最高裁大法廷は、昨年2014年(平成26年)12月に行われた衆院選が「違憲状態」にあるとした。

この判決に触れる前に、2012年(平成24年)11月に行われた党首討論について触れたい。

この党首討論のときは未だ民主党政権時代で、民主党党首は当時の野田首相、当時野党の自民党党首は安部晋三総裁(現首相)である。この当時、自民党は、自公の協力で消費税法案を成立させながら約束通り総選挙を実施しない野田首相を「嘘つき」呼ばわりしており、党首討論もその流れで行われた。

その席上、安部総裁は大見えを切った。曰く「来年(2013年)の通常国会において、私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行って行く、こう約束をしています。今この場でそのことをしっかりとやっていく。約束しますよ。」例によって自信満々の口調、大仰な身振りである(私なんかは、このスタイルに本当に本当に辟易するのだが)。

その直後に行われた総選挙のときの自民党公約は「次期衆院選から衆議院の定数を1割削減」というものだった。つまり当時480議席だった衆議院定数を48議席削減するというのである。

ご承知のとおり、このときの総選挙で民主党はボロ負けし、自民党が政権に返り咲き、安部総裁は内閣総理大臣になった。権力を手にした今こそ大見えを切った公約を実施すべきときである。責任ある政治家なら、国民の負託に応えて政権に返り咲いた政党なら、それが出来るし、すべき筈だった。

ところが、その2012年解散直前に行われた選挙法改正のいわゆる「0増5減」つまり僅か5議席の削減された状態のまま、公約なんか眼中になかったかのように安部総理は2014年解散を行った。この間、彼は、自民党は、何をしていたのか。自信満々で発言し高々と公約に掲げた定数削減と選挙定数不均衡是正を行うまでは、総選挙を行うべきではなかったのではないか。

今回の最高裁判決は、違憲状態にはあるけれども、合理的期間内に是正がなされなかったとは言えない、だから合憲だ、とする。相変わらずの甘々の判決である。

2012年総選挙が違憲状態であることは2013年に最高裁が宣言している。それでも、2014年12月はそれから1年以上経つのに未だ合理的期間内だと言えるのか。そもそも、最高裁は衆院選・参院選の定数不均衡選挙について、このところ「違憲状態」と「合理的期間」を繰り返している。いい加減「合理的期間」は過ぎているのではないか。

「違憲状態」を過ぎて「違憲」と断じる少数意見に私は諸手を挙げて賛同する。

違憲状態の衆院選挙・参院選で多数を得た自公が、国の根幹を変え憲法を蔑ろにする安保法を強行採決した。大見えを切って公約とした定数削減など碌に対処せず、米議会で違憲の安保法の成立を確約して、国会ではなりふり構わず成立させるという奴隷根性丸出し売国的政治家の有り様と、民意の理解を得ていないと自認し「国民に丁寧に説明する」と言いながら「そんなこといいじゃない」と女性議員を舐め切った野次を飛ばす対応と、憲法に則って臨時国会召集を求められても今の時期の国会論戦がマズいとみるや国会召集を先延ばしする。先日なんかジャパンハンドラーと言われるアーミテージ氏らに勲章まで授与しているのだ。もうホトホト呆れる。

今回の最高裁判決は、やはり腰が引けていると私は思う。仏の顔も三度、を超えているのではないか。

司法にも期待できないのであれば、次期総選挙で主権者国民が驕れる為政者に鉄槌を下すという本道に戻るしかない(ただ、政権の受け皿にならなければならない筈の野党で、チンケな小政党が離合集散を繰り返そうとしている姿には暗然とする。なんだ、あの維新の会のドタバタと民主の迷走は)。