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福岡市弁護士甲能ホーム判例解説インデックス鹿児島家裁「少年の自白認めず不処分」

判例解説インデックス

2006.08.25(金)

鹿児島家裁「少年の自白認めず不処分」

自白調書の信用性を否定し「無罪」

鹿児島家裁は、駐輪場の支柱を壊したとされた少年(17歳)の審判で、少年の自白を認めず無罪にあたる「不処分」とした(朝日新聞8月23日夕刊)。もっとも他の傷害事件については事実を認め保護観察処分にしたという。

警察に逮捕・勾留されたり(或いは在宅のまま)取調べを受けると、「供述録取書」という書類が作成される。俗に「調書」と略称され、被疑者・被告人(少年審判では少年本人)が犯罪事実を「自分がやった」と認める内容の調書は「自白調書」と呼ばれる。

この「供述録取書」とは、建前としては被疑者・被告人の「供述」(話したこと)の「記録」を「取った」「書面」ということで、作成者は取調官(警察官・検事)だが、文章自体は、被疑者・被告人が一人称で喋ったことを記録する体裁になっている。例えば、大雑把に言うと「被疑者の供述を以下の通り録取した。」と頭書した上、改行し「私は、今回、○○したとして逮捕され取調べを受けている者です。当日のことをお話します。…」等という文章が続く。この「供述録取書」は取調官が一人称部分を含めて作成し、最後に内容を本人に読んで聞かせ、間違いなければ本人の署名と印鑑(通常は指に特殊インクを付けて押す指印)を最後に貰うことになっている。警察では取り調べ警官が自分で調書を書いているようだが、検察庁では検事の口述を検察事務官が筆記する(ただ最近では殆どワープロ化されているので、検事が自分でワープロを打っているのかも知れない)。

このとき取調官の思い込みが強くて、誘導等で真実に反する調書が作成される危険がある訳である。いわゆる冤罪事件ではこの様な自白調書が有罪の根拠とされる。特に少年は、大人の警察官・検事に抵抗できないまま意に反する調書が取られる危険があると言われている。刑事裁判・少年審判では、この調書読みが基本的な証拠調べということになるのだが、刑事裁判では弁護側が調書の証拠提出に同意しなければ原則としては証拠に出て来ないのに対し、少年審判では同意・不同意の制度がないので弁護側が異議のある調書も審判に出て来てしまう。そこで調書の信用性が問題とされ、本件では調書の信用性が否定された訳である。