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2010.11.13(土)

慟哭

貫井徳郎

本の帯風のキャッチコピーを使えば、アッと驚くどんでん返しである。唸ってしまった。

繰り返される幼女誘拐殺人事件、それを追う警視庁本部という枠組みだが、追う側と追われる側とが章毎に交互に語られる。一方の追う側の章では、警視庁の捜査本部長はキャリアでありながら、その出自などから微妙な立場におかれている主人公が描かれる。追われる側の章は、当初、幼女誘拐犯人として描かれているのがわからず寧ろ連続幼女誘拐に至る過程が丁寧に語られる。捜査本部長、犯人それぞれ丁寧な造形がされ、読む者を納得させる。章が進み、この本部長と犯人とが、どこで、どうやって交錯するのか、どんどん期待が高まる。そして、見事などんでん返しが決まる。

筋立ての巧妙さにも舌を巻くが、しっかりした人物造形にも沈鬱な文体にも感心させられる。物語の雰囲気に飲み込まれて中々手が離せない。時間が許せば一気読みしたいところだ。いずれにしても見事な構成で、久々に著者に騙される快感を味わった。十分お勧めできる。


創元推理文庫
743円+税