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判例解説インデックス

2009.04.14(火)

判例解説「内々定撤回、違法と福岡地裁」

内定は、どこまで認められるか

採用内定式の直前に内々定を取り消したのは違法だとして、福岡県内の20代の元男子学生が不動産会社に損害賠償を求めていた労働審判で、福岡地裁は内々定取消を違法と断じた(朝日4月13日夕刊)。

「派遣切り」や「内定取消」など労働環境の悪化する中、「内々定」まで貰っておきながら、それが突如として一方的に取消を通告されることが常識的とは思えない。正社員さえリストラに遭う中、しょうがないさと言ってはいられないと思う。その意味で、今回の裁判所の判断は妥当だと思う。

ところが会社は異議を申し立てる予定だという。

ここで、「労働審判」の説明が必要だろう。「労働審判」は、裁判所・使用者側委員・労働者側委員が1名づつ出て合議体を構成し、労働紛争を原則2回(最大3回)の審理で決定を出す迅速性を尊ぶ制度。しかし「審判」であって「裁判」ではないので、不服のある者は異議を申し立てえることが出来、その先は通常の「労働裁判」が待っている。また「審判」の方には必ずしも法的に拘束されず比較的自由な判断が許されている点で柔軟性もあるとされ、近年、利用者が増えている。

こういう背景の下、会社は「異議」で正式裁判に持ち込むことにして、「法解釈の厳格性」を求めるつもりなのだろう。