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2011.03.18(金)

歌謡曲−時代を彩った歌たち

高護

歌謡曲―特に戦後の歌謡曲の歴史を辿ったものである。演歌からJポップに至るまで、その目配りは幅広い。

著者は、私と同じ歳(1954年生まれ)で生きてきた時代が一緒だから、取り上げている歌謡曲は殆どが私も知っているし、口ずさむことができる。歌謡曲を取り巻く時代背景への言及はそれほど多くはないが、歌謡曲の潮流そのものは流石に専門でお手の物である。

歌謡曲は、民謡や浪曲などの日本の伝統から来るものと、戦後日本に流入した欧米のポピュラー音楽の影響に立つものの大きく二つに分けられるのだろう。しかし、その境界周辺の歌も数多く存在し、それが時代に恵まれると大ヒットにつながる。歌そのもの・作曲家・作詞家・歌手・プロダクション・レコード会社の固有名詞が頻繁に出てくるが、残念ながら私がフォローできるのは歌と歌手の一部である。しかし、それでも歌謡曲の世界での栄枯盛衰が読み取れ、「読むなつかしの歌謡曲」と言った風情である。専門の音楽的な分析も随所に語られ、音楽的素養のない私にはわからないが、どの点がそのヒット曲の画期的な部分だったかがわかるようになっている。サブカルチャーに興味のある方に、ご一読をお薦めする。


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