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2011.01.23(日)

ゴーレムの生命論

金森修

ユダヤ教の世界では、ラビ(ユダヤ教の師)が修業を重ねて魔術を習得すると、土くれからゴーレムと呼ばれる人造人間を作り出すことが出来ると信じられていた。

著者は、この伝説から言葉が喋れぬ人造人間ゴーレムを素描し、その人造人間という性質から、それに近しいフランケンシュタインからロボット、果てはiPS細胞まで引き合いに出して生命とは何か、生命を造りだすとは何かを突き詰めていく。

もちろん答えは出ない。というより、ゴーレムの亜人間性という概念から、人間の不完全性という方向へ思弁を働かす。本物の人間の中にあるゴーレム性という問題の立て方に至るのだ。そして、そこに至るまでに、様々な神話・小説・映画などの芸術作品を博引傍証し説得力を高める。

著書の流れは面白いが、そしてその展開の果てに見えてくる「生命とは何か」という問いは興味深いが、本書で何か答えを見つけ出すことはできない。というより見つけ出そうとして読むことは間違いで、ゴーレムを導きの糸として、生命の本質を考えてみようということなのだろう。


平凡社新書
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