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2010.12.19(日)

「お笑い」日本語革命

松本修

比較的最近の日本語の変遷が、テレビの「お笑い」芸人を通じて広がったという視点で、幾つかの言葉を取り上げて、語源や発信者を探るという本である。曰く「どんくさい」「まじ」「みたい、な」「おかん」「キレる」等を扱う。

現在どういう使われ方をしており、それがどこの誰によって発信され、どういう広まり方をしたかが探求される。

著者ご自身は滋賀県出身で京大を卒業し大阪の朝日放送で仕事をするという生粋の関西人である。当然テレビ関係者が仕事仲間で友人・知人も関西人が多い。またお仕事がお笑い番組などのバラエティがご担当なので、芸人さんとはツーカーの仲である。そういうルートを通じて語源を探って行くのだから、中々に面白い。

ただ、人に会って耳学問で語源を追求するだけではなく、文献的な確認も怠らず、言葉によっては江戸時代まで遡る。仕事内容として「全国アホ・バカ分布図の完成」でテレビ界の賞を受賞するなど、その実力は伊達ではなく、本書の考察も表層的なものではない。最近のテレビタレントの名前も頻出するが、薄っぺらなタレントの裏話など微塵もなく探求の態度は極めて真摯である。特に歴史的な奥行きは失っておらず、感心することしきり。

殆ど日常語化している上記の幾つかの言葉が、案外歴史が浅かったり、逆に深かったり、中々に興味深い。

日本語の現状に興味をお持ちの方にご一読をお薦めする。


新潮社
1400円+税