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福岡市弁護士甲能ホームメディア評インデックス行動分析学入門−ヒトの行動の思いがけない理由

メディア評インデックス

2010.06.20(日)

行動分析学入門−ヒトの行動の思いがけない理由

杉山尚子

広い意味での心理学だが、人間の行動だけでなく動物の行動なども併せて考察するし、色々な実験結果も提出されるので、「科学」の名にふさわしい内容となっている。

人間の(動物もそうだが)行動を、「行動随伴性」という外部からの認識可能な要素を通じて考察する。例えば、電気のスイッチを入れるという行動をみるとき、直前の状態(部屋が暗くて視界が悪い)→行動(電気のスイッチを入れる)→直後の状態(部屋が明るくなり視界が良くなる)という風に分析できる。そして、この直後の状態を、「行動随伴性」と呼び「好子」(好ましい状態)と「嫌子」(好ましくない状態)に分類し、それで行動を説明して行くのである。例えば、上記の「明るくて視界が良い」状態は「好子」であり、これにより行動(電気のスイッチを入れる)が促進される。例えば真昼間の明るい部屋では電気のスイッチを入れる行動が促進されないのは当たり前として、電気が壊れていれば「明るく視界が良い状態」という「好子」が出現しないので、電気のスイッチを入れるという行動は促進されない。

語り口は平易で、挙げられる事例も上記のように大変わかりやすい。時折まじえられるユーモアも、実際の講義を聴いているようで、著者の講義の様子が想像できる。

本書は、「入門」なので、上記の様な当たり前の様な事例が多く出てくるが、実際にこの考え方で様々な応用がなされて成果を挙げているそうなので、もう少し深く研究してみる価値がありそうである。私の仕事の例えば示談交渉などでも大いに応用が利きそうな気がする。


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