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2009.10.31(土)

シャドウ

道尾秀介

母が死に父と二人きりになった少年が主人公。母が死ぬだけではなく、少年の周りを数々の不幸が襲う。最後にそれが一つの根であったことが判明する。第7回本格ミステリ賞受賞作。

医師どうしの友情が一つの軸になっているが、「白い居塔」の様な医局内の権力争いではなくて、医師同士の子供たち同士のからみが軸である。ミステリとして読むより心理小説といった方が適切か。子の心理・父の心理・第三者の心理それぞれがからみあって、独特の緊張感を生む。更に精神分析も加味されて、色々勉強にもなる。

また、一人の少年の成長期としても読める。描かれている事件に毒々しさがあるが、少年物語であるが故の清々しさもある。

結末は、それほど意外ではないが、ちょっとミステリと呼ぶには違和感がないでもない。やはり心理小説かな。

登場人物の数もそれほど多くなく、ミステリにしては比較的薄いので早く読める。楽しいひとときを。


道尾秀介<br />草原推理文庫
草原推理文庫
700円+税