私の出身地である大分県日田市で行われていた市民大学「自由の森大学」が、3月4日の開講日を以て終了し、4月8日のスタッフ総会を以て完全に解散した。
書評の「旅の途中」にも書いたが、この市民大学は市民の完全なボランティアで運営され、「学長」に日田出身のジャーナリスト筑紫哲也氏を頂き、政治学者でマスコミによく登場される福岡政行氏が長く副学長をされた。
基本は、有識者やタレントを招いての講演と地域の色んな文化活動(音楽や舞踊など等)の発表を組み合わせて、日田市民会館で3時間ほど毎月行うというスタイルで、12年間続いた。
招かれた講師は、筑紫さんの顔も利いて錚々たる顔ぶれであり、日田の田舎にしては都会の文化講座に引けをとらない内容だったため、日田市近郊は勿論のこと遠くは東京から或いは関西そして福岡市近辺からも年間受講する方もいた。講演を集めた本も数冊出している。
吉永小百合さんがお見えになったときは立ち見が出たという話だったが、その日は私は参加できなかった。「バカの壁」がベストセラーになる前の養老猛司さんが講演なさったときは私も聴いていたが、中々面白かった。
私自身は、この実行スタッフの同級生から誘われて、福岡市在住ながら高速バスで1時間半という距離でしかないため顧問弁護士という名目で関わることになった。この大学が3期目頃で10年前になる。もちろん無給である。尤も弁護士としてこの市民大学の運営に影響力を行使したことは全くなく、ただのお飾りで、いずれもご同業だという理由で精々中坊公平さんがお見えになったときの接待係り、堀田力さんがお見えになったときのインタビュアーという形で若干のお手伝いをしたに過ぎない。
月一度の開講日は大体のところ土曜日に設定されていたので、講演終了後は、講師を交えた打ち上げに参加するか、受講生の同級生などと日田の街を飲み歩くというパターンだった。月に一度の仕事を忘れた楽しいレクリェーションで、私自身はとても楽しみにしていた。講演を楽しみにというより、その後の方を楽しみにしていたのだが。
その気になれば何時でも帰れる距離なのだから、「自由の森大学」がなくなったからといって、別に毎月でも日田に飲みに行けば良いようなものだが、やはり何かイベントがないと腰が上らない距離ではある。その意味で、正直なところ淋しい気持ちは否めない。
いずれにしても、この閉校で日田市の文化の火が消えてしまった訳ではないのだから、今後も応援して行くつもりである。